選ばれなかった私に。

たまった思いを淡々と。

2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

言葉はいつか消えてしまう

誰かの目をしっかりと見れるのは、仕事の時だけ。 初対面の人と話すのはとても楽だった。聞けることがたくさんあるから。 2回目以降からどんどん話題がなくなって、気まずくなるのが常だった。 君の話をしてよ、って私は思う。 いつだって思う。 私には語れ…

君は身勝手で自由を知らない

曇り空を見ればなんとなく憂鬱になって けれど晴れて肌が焼けるくらい暑い日は、 もう少し曇ればいいのに、と勝手なことを思う私だった。 足早に大勢が行き交う朝の駅で、誰のこともひどく遠く感じる。 すれ違う人は全く他人で、いてもいなくてもそれが誰で…

できれば道端の石になりたい

夕飯につくった茄子の味噌炒めの味が濃すぎて、なんだか泣きたくなるよ。何に対してもちょうどいいバランスが分からない自分のことを、見放してしまいたくなる。 客観的に、なんて、難しいことを言うね。 いつまでも主観は切り離せずに、私の中心は私であり…

正しかったのは無関心でいられたから

誰かの悪口を聞いて救われたことがあるなんて、最低だね。 でもそんなふうにしか慰められなかったことを、 それでも後悔すらできなかったんだよ。 雨に濡れたアスファルトが、反射してキラキラ光るのが綺麗だって、 そう思うのと同じように、 君の瞳からこぼ…

つくりものだよって君は笑ったけど

あのテーマパークの雑踏のなかで、 絵の具を薄くといたような水色の空を見上げたことを、覚えている。 パレードの色とりどりの紙吹雪が、 何もかもを覆いつくすように舞っていた。 そこでは誰もが笑顔だった。 永遠のように鳴り響いていた音楽に、 まるで夢…

土だけが残った鉢植えを

庭先に気づけば咲いていた朝顔の美しさが、自分のものにはならなかったように、 誰かの喜びは、自分の喜びにはならなかった。かつて大袈裟に誰かを祝い、自分のことのように喜んでみせては、 同じように自分に返ってくると当たり前のように信じたことが、 こ…

雨が降ればいつも濡れてしまうその肩

例えばそれは、穴のあいた傘。誰かに差し出しても黙って首を振られるような。 君のやさしさは、いつだってそんな風だった。 君は、君自身を削って分け与えることが誠実だと信じた。 けれど全てを与えきれない自分のことを、君は許せなかった。 君のやさしさ…

車窓から見えた遠ざかっていく街は

別れる時はいつも、またそのうちに会えるかのような、淡白なさよならを言った。だから、去り際に感極まって泣きだしてしまう誰かを、まるで遠い世界の人間のようにぼんやりとただ眺めた。 そうして涙は、いつだって流れなかった。そうやって別れから目を背け…

記憶のなかで私はやさしい

なにかをしようとして、ほんとうは何もしたくなかったことに気付く。「とても悲しい」と言葉にして、本当はそんなに悲しくはないことに気付く。 いつも中途半端に、感情すらも中途半端に日々が過ぎて、いまの自分には特別に嬉しいことも悲しいこともなく、た…

今日と明日のあいだに何も変わりはしない

君が、人とうまく喋れない自分を許せなかった 長い夜のことを、覚えている。君は、これまでの自分は他人に対して関心が薄すぎたのだ、と思った。 けれどもまた、他人を耐えず意識して、そしてすがりすぎたのだ、とも思った。 あの夜明けの空を見るといつも、…

通り過ぎた駅にまた明日も

地下鉄が通りすぎる音が、耐えられないほど耳障りに感じるときは、たいてい感情が疲弊している。 死んでしまいたいほど辛いことがあったわけではなかった。 たぶんそれは、例えば公共料金を単なる怠惰で延滞したり、つまらないミスでつまらない言い訳をして…

なにかにすがりたかったあの夜のことを

笑っていたのは、楽しかったから。 そうだと信じた君の純粋は、 いつからか戸惑って全てを疑い始めた。 愛想笑いと自分の心があべこべになっては、 また同じになったりした。 悲しかったのは、無理に笑うことではなく、 自分の心を見失ったから。 歩道橋から…

やさしいから君は、君の悲しみに気付かない

いつか望んだことを、君が覚えていれば嬉しい。 諦めることは生きていく術ではあるけれど、 けれどそれだけではやはり悲しい。 君が、悲しくはないと慣れた顔で笑ってたとしても。 いつか夜の闇にぽつんと光を灯した自動販売機の前で 君は誰からも忘れられた…