選ばれなかった私に。

たまった思いを淡々と。

車窓から見えた遠ざかっていく街は

別れる時はいつも、またそのうちに会えるかのような、淡白なさよならを言った。

だから、去り際に感極まって泣きだしてしまう誰かを、まるで遠い世界の人間のようにぼんやりとただ眺めた。
そうして涙は、いつだって流れなかった。

そうやって別れから目を背け続けては、人との繋がりからも遠ざかっていった。
泣いていたその人はきっと、私よりも強かった。


いつか見たその絵を忘れることができない。

褪せたようなその色彩と、淡い輪郭。
まどろんでいるようだ、と思う。
懐かしくて涙を流した夢、
けれど目覚めた時にはもう忘れてしまった夢に似ている。

そしてその絵の、遠景。
私はそればかりを見ていた。
ここではないどこかに行きたかった。
遠い、霞の中に美しく見える、現実味のない場所に行きたかった。そうして私自身を淡さの中で消滅させてしまいたかった。


誰かが側にいることが嬉しかった。
けれど同時に去られることへの恐れが付きまとった。
そうしてひとりで佇むことを夢見た私を、誰かが叱ってくれることを、知らずに望んで。