選ばれなかった私に。

たまった思いを淡々と。

君が泣くのを見たかった

もっと悲しい空を、見た気がする。



まるであつらえたように、君には悲しみがよく似合う。



甘いものを食べれば楽になると、
教えてくれたことは救いだった。
ただ摂取することでしか紛れることがないのなら、
それは理性の領域ではないのだろう。


何千年も昔、
本能しか持っていなかった進化のはじめの人間にも
きっと悲しみはあった。


誰かの死を悼んだり、罪悪感に蝕まれたり
そんなことではなく
食べるものがないとか
単純で利己的で致命的な理由で。


時が経つにつれて
人間は理性と社会を手にいれて
こんなに複雑になった世界で、
感情さえもそれに倣う
理性で細分化された悲しみに、
君は振り回されては君を責める


でも
悲しみは
理性ではどうしようもないから
些細なことで悲しむことは
君のせいでは、ない。
それは君の内臓と一緒で
知らない意志で動いているから
それが自分の弱さだと思わなくても、いい。



夕暮れの横断歩道の前で君は、
点滅する信号機をぼんやり見ていた
足早に渡っていく人の後ろで
途方にくれたように君は立ち止まり、
渡ることを諦めた。
君には急ぐ元気も
理由もなかった。
今日のような明日が永遠に続いていくことに
君は静かに絶望していた



立ち止まっても誰も気付かないことが
君を苛みも救いもする
君が見ていた向こう側の景色を
どう感じたのか君が言わなければ誰も知らない
口に出しても仕方のないことならせめて
開き直って誰かのせいにしてしまえばいい。




空が悲しいくらい綺麗だった
君はまた無理をして笑った。