選ばれなかった私に。

たまった思いを淡々と。

記憶のなかで私はやさしい

なにかをしようとして、ほんとうは何もしたくなかったことに気付く。

「とても悲しい」

と言葉にして、本当はそんなに悲しくはないことに気付く。


いつも中途半端に、感情すらも中途半端に日々が過ぎて、いまの自分には特別に嬉しいことも悲しいこともなく、ただ日々だけが過ぎて。

昔のことばかりを思い出している。

ふかした芋に塩をまぶしただけの美味しさを、青いガラス瓶の安っぽい美しさを、お風呂場から漂った清潔な暖かい香りを。

かつて単純だったものを、
単純に愛したいつかの自分を、
もう断片でしか思い出せない。