散文
なにかをしようとして、ほんとうは何もしたくなかったことに気付く。「とても悲しい」と言葉にして、本当はそんなに悲しくはないことに気付く。 いつも中途半端に、感情すらも中途半端に日々が過ぎて、いまの自分には特別に嬉しいことも悲しいこともなく、た…
君が、人とうまく喋れない自分を許せなかった 長い夜のことを、覚えている。君は、これまでの自分は他人に対して関心が薄すぎたのだ、と思った。 けれどもまた、他人を耐えず意識して、そしてすがりすぎたのだ、とも思った。 あの夜明けの空を見るといつも、…
地下鉄が通りすぎる音が、耐えられないほど耳障りに感じるときは、たいてい感情が疲弊している。 死んでしまいたいほど辛いことがあったわけではなかった。 たぶんそれは、例えば公共料金を単なる怠惰で延滞したり、つまらないミスでつまらない言い訳をして…
笑っていたのは、楽しかったから。 そうだと信じた君の純粋は、 いつからか戸惑って全てを疑い始めた。 愛想笑いと自分の心があべこべになっては、 また同じになったりした。 悲しかったのは、無理に笑うことではなく、 自分の心を見失ったから。 歩道橋から…
いつか望んだことを、君が覚えていれば嬉しい。 諦めることは生きていく術ではあるけれど、 けれどそれだけではやはり悲しい。 君が、悲しくはないと慣れた顔で笑ってたとしても。 いつか夜の闇にぽつんと光を灯した自動販売機の前で 君は誰からも忘れられた…