選ばれなかった私に。

たまった思いを淡々と。

やさしいから君は、君の悲しみに気付かない

いつか望んだことを、君が覚えていれば嬉しい。
諦めることは生きていく術ではあるけれど、
けれどそれだけではやはり悲しい。
君が、悲しくはないと慣れた顔で笑ってたとしても。


いつか夜の闇にぽつんと光を灯した自動販売機の前で
君は誰からも忘れられたステージみたいだと言った。
さめていく缶コーヒーの温もりにすがりつくように
両の掌でぎゅっとかかえていた。


忘れないでほしい、
君があのとき感じた寂しさのことを。
あの冬の夜に置き去りにされた君の望みを。


高架線の下で過ぎていく列車の音を聞いている。
あの日の静けさと、さめきった缶コーヒーの温度を思い出しながら。
愛でも友情でもなく、最後に残った寂しさだけで君と繋がっている私のことは、
忘れてしまってもいいから。