選ばれなかった私に。

たまった思いを淡々と。

また飲みにでも行こうよって君は

去っていく日の空は、訪れたはじめの日の色に似ていた。
がらんとした白い光の差し込む部屋で、まるで夢のようにぼんやりとしたままで、いつの間にか始まって、そしてふと終わっていった。


終わりにしたのは私。
けれど、また否応なしに
きっと日常に飲み込まれる。


また会おうねと何度も言って会わず
何年かたてばもう
会うには遅すぎるね。


降り立ったはじめの時から見えたその白いタワーは、
いつもこの街の中心であり続け、
なにもかもを見届ける。
その白さの中に、かつて雑踏に怯え、それでも期待に満ちて見上げたあの頃の私を思い出す。


細胞がひとつずつ生まれ変わって
もうあの頃の自分とは
まったく変わってしまったのかもしれない。
人が多いところでも
今ではぶつからずに歩ける。
でも、
遅れる電車に毒づいたりもするようになった。

夕焼けが綺麗だと思うことは変わらないけど、空を見上げることはいつしか減っていった。


自分の心すら同じではいられないなら、
他人の心が移り気なことはもう
どうしようもない。


いつだって戻っておいでよって
君が書いた手紙を、
もう戻る気はなくても
君がもう忘れてしまっていても
幾度も読み返しては涙したことを、
君に最後に伝えられたらよかった。