選ばれなかった私に。

たまった思いを淡々と。

言葉はいつか消えてしまう

誰かの目をしっかりと見れるのは、仕事の時だけ。
初対面の人と話すのはとても楽だった。聞けることがたくさんあるから。
2回目以降からどんどん話題がなくなって、気まずくなるのが常だった。


君の話をしてよ、って私は思う。
いつだって思う。
私には語れるものが何もなかったから。


周囲を気にして、言いたいことを飲み込んで、
そうしていつからか、言いたいことさえ消えてしまっていることに気づいた。
口から出る言葉はあたりさわりのないものばかりで、
私がそれを言う必要なんて、
ほんとうはまるでない。


あるとき心を伝えようと口を開いて、なのにいつしか言葉は死んでいって、陳腐なものになるのだった。


自業自得だって、君は言うかな。


何もかも受け入れることがやさしさだと、そんなふうに勘違いして聞き役を演じては、他人に任せきりにしてきた罰だよって。


さよならと最後に笑って、
もう それで終わりでよかった。

今日は楽しかったよありがとうってメールはいらないと、
けれど言えない私はずるいね。


連絡手段なんてなくてよかった。


1度会ったきりで、
また会いたいって思いながら、
2度と会わずにいられたらよかった。


いつか見た海の話を、君はしたのだった。
曇り空の下で鉛色に輝く水面のことを。
遠くから眺めるなら、いつだって綺麗に見えるのだと
君はすこし笑った。